故障した、古くなった、特価品を手に入れた…などいろいろな理由で使っているパソコンを処分することはよくあります。
そうやってユーザの手から離れたパソコンからハードディスクが取り出され、データが漏洩する事故が発生しています。
処分したパソコンからデータが漏れる確率は決して高くないものの、一度漏れてしまえば取り返しのつかないことになります。
今回はその対策についてお話しします。
ファイルを削除したり、領域を初期化すれば安心と思っている方は非常に多いのですが、データを盗み取ろうとする人にとってこれらの方法は全く無効です。
ファイルの削除は、住宅や店舗などでいう「入居者募集」の看板を取り付けるだけのようなもので、その中身はおおむね残されています。
初期化は、本来は全てつぶし込んで区画整理するためのものですが、実際に行われるのは領域の一部の情報を改めるだけで、中身が全て消されているわけではありません。
これらの方法は、ただ人間にとって今まで使っていたファイルが見えなくなるのと、その容量分が再利用されるようになっているだけで、それほど高度な復元技術を使わなくてもデータの取り出しは実現するのです。
パソコンを使っていて、ハードディスクが壊れた、認識しなくなったという故障は多くの方が経験しています。これらは、パソコン本体との通信ができない状態や、読み書きするためのヘッドが正常に動作しないとか、データを記録する回転盤(プラッタ)に何らかの不都合が出ていることが原因です。
このような状態のハードディスクの中は、良好な状態でファイルが残っています。
これらのハードディスクは、若干のパーツの付け替えなどの手間をかけるとデータの取り出しが可能となり、むしろ削除や初期化などの操作が行われていない分、再認識に成功すればほぼ完全な形でデータの復元ができます。
故障したというのと、データが全滅したというのは別の事柄なのです。
ハードディスクを「破壊」する他に手立てはありません。破壊方法は大きく分けて3つあります。
ハードディスクの全領域に無意味な数値を何度も書き込み、ファイルの痕跡がなくなるようにします。
パソコンからハードディスクを取り出さずに手軽に実行できますが、故障したハードディスクには使えません。
大変長い時間がかかる反面、その効果を検証するのは困難です。方法としてはあまりおすすめできません。
ハードディスクに対して強烈な電磁波を長時間浴びせて、内部の磁気を乱して使い物にならなくするという方法です。
こちらも大変長い時間がかかる反面、その効果を検証するのは困難です。
故障したハードディスクにも使える方法で、論理消去よりは確実な方法ですが、手間と効果のバランスがよくありません。
専用の装置を持つ業者に預けることになりますが、最後まで見届けられるでしょうか。
ハードディスクに強い力をかけて穴を空けたり、変形させることによって、ハードディスクそのものをつぶしてしまう方法です。
物理破壊されてしまうと、そこから部品を交換したり、データを復元するための装置に接続することができなくなります。
ハードディスクを物理破壊するための時間は、1分もあれば十分で、非常に高速かつ確実です。
最近では出張サービスで目の前で速やかにハードディスクを破壊する業者が登場しています。
データ漏洩を本当に防止できると確信できるのは、物理破壊に限られます。
企業では、重要なファイルを高度な暗号化して専用の装置に収めるなど、万一漏洩しても被害にならない方策をとったり、そもそもハードディスクにデータを保存しない方法をとることが一般的となりました。
しかし、個人のパソコンでは生の状態でハードディスクにファイルを保存していたり、甘い暗号化(暗号強度は高くても、解除する方法が見え見えの状態)をしている状態がほとんどです。
今や、年賀状ソフトの住所録に代表される個人情報などが満載された、個人のパソコンからの情報漏洩リスクは無視できないレベルに達しています。
適正な処理ルートに出したからといって、データ漏洩のリスクがゼロであることを保証しているわけではありません。ハードディスクは貴重な資源の宝庫で、リサイクルの過程で第三者の手に渡っていきます。そこに悪の手が忍び込んだ場合、恐ろしい情報漏洩が起きます。
事前の対策をして損になることはないといえるでしょう。